道州制「中間報告」 雑感③
さて、「中間報告」は、“利便性と負担の関係が明確になり、政治が身近なる”と言と道州制の「よさ」を述べているが、「給付・反対給付均衡」の私的保険、市場原理主義の立場のもので、人権保障をどう公が担っていくかというものではないと思う。
そうした背景に、「地方分権」という言葉が180度意味が違う内容で語られていることがあると思う。
財界が主導する「地方分権改革」は、多国籍企業中心の国づくり、「自助と自立」・地域受益者負担主義にもとづく中央政府と地方政府の「役割分担」論であり、憲法の内実を豊かにするため、住民自治の発展させるという意味での「地方分権」とはまったく違うものだ。
杉原泰雄先生などの「充実した地方自治」論を読むと、昨今盛んに議論されている「補完性の原理」だけでは、中央政府と地方政府の序列化、役割分担論に直結する危険があり、「全権限性の原則」「近接性の原則」を明確にすることが不可欠だと述べている。
「全権限性の原則」とは、憲法が定める平和的生存権を含めた基本的人権を保障するための権限を地方自治体に与えるというもの。「近接性の原理」とは、政策決定や事務の権限は、1人ひとりの生活により近い政治・行政体を優先して配分されるというもの。国によるナショナルミニマムの保障を前提に、より具体的、個別的にその内容を保障、実現しようとするものと言えよう。
「役割分担」の名のもとに、社会保障の責任は地方におしつけ、防衛やエネルギーは国の事項として、基地問題、原発立地問題は、地方に口を出させないという「地方分権改革」とは、まったく違う。
世界地方自治宣言、ヨーロッパ地方自治憲章においても、地方公共団体に直接関係する「すべての事項」につき、「できるかぎり意見を求められる権利」や「他の団体による意思決定過程への参加権」について規定している。中央政府と地方政府の関係については、「地方分権論」の中ではっきりさせておくべき中心点の1つだと思う。
では、地方自治の発展のために何が必要だろうか。
◆充実した地方自治の発展
住民自治を前進させ、地域を守り発展させるという点では、「小さくても輝く自治体フォーラム」や「全国水源の里連絡協議会」の発展など実践的取り組みが大きな役割を果たしていると思う。21世紀が、環境、食料問題の世紀であること、また、昨今の海外依存経済のもろさの露呈(日経2/19「改革議論の視点を変え、大企業から家計へ経済政策の軸足を移せ」)などを考えれば、地域の個性、資源を生かした持続的な発展を担う地方自治の役割は大きいと感じる。
そういう中で「自治の総量論」という言葉があるのを知った。「福祉や教育など国民の生存や生活の維持・向上を目的とする国の内政課題の充実と市町村・都道府県という自治システムの総体としてのパフォーマンスを意味する自治の総量の拡大を目指す」というものだとのこと。市町村、都道府県がどう役割を発揮し、憲法の内実を豊かにしていくのか、「道州制」が語られるもと、その対抗軸としても広域行政論の発展がもとめられていると思う。
それらは「地方自治体の自治を拡充する広域行政論」として展開されている。
①水平的自治保障~住民自治や市町村自治の保障という観点から市町村連合、もしくは県が加わる広域連合の必要性。
~この点では、高知県が、小さな自治体の支え、県民だれもが最低限のサービスを受けられる仕組みづくりを研究する必要がある。保健所機能の再構築、国保や消防の一元化などであるが、地方自治の空洞化なのか充実のための仕組みづくりなのか。ちなみに、県は、「地域企画支援員」60名を配置し、住民運動、市町村、県政を有機的につなぐ取り組みをしており、それと併せての評価が必要になるであろう。
②垂直的自治保障~都道府県が基礎的自治体としての市町村の補完行政を担っていく。この点では、県行政のリストラ、民営化、外部化を防ぐことが大事だと指摘されている。県の専門性、力量が低下すれば市町村を援助できない。(ちなみに、小規模自治体をどうするかが「地方分権改革」の中で議論されているが、県直轄にする案も、スリム化した県のもでは不可能、非効率になると指摘されている、という指摘があるがおもしろい。)
そうしたことから③都道府県の自治の保障が必要だ。
その点で、中核市・特例市の創設や市町村合併による基礎自治体の大規模化、指定都市の人口要件緩和、中核市要件の規制緩和、都道府県から市町村への権限移譲(最近、県内の市で児童虐待死事件があったが、市町村が第一次の相談窓口となっている。)保健所業務の特例市への移譲検討など、都道府県行政の空洞化という取り組みが進んでいる。
④県の自治を拡大する広域行政論~ 都道府県広域連合などの検討のことだが、大都市部など地理的にも、通勤など人の交流も活発なところのことはよくわからないが、四国でなにを広域であつかったらいいのか。鳥獣被害対策、国土保全や水源確保などから四国山脈を通信に、山の管理、手入れをどうするのか、は連携を深めることは必要だと思うが、また、交通体系の合理的な配置などがあるが、ピンとこないのが実感だ。
とにかく、今ところ、県知事も「「地方の機能や裁量権の強化がなければ、周辺地域はますます取り残される」と道州制については慎重だ。まずは、県と市町村、そして市町村の連合、県も入った連合など多様な形での地方自治の充実を探究したい。
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