道州制「中間報告」 雑感②
08年1月17日の経済財政諮問会議に冬柴大臣が「国土形成計画」についての資料を提供しているが、道州制のイメージをつかみやすいと思う。「あたらしい国土像」として全国を8ブロックにわけ「多様な広域ブロックが自立的に発展する国土構築」するとしたものは…
①「広域ブロックが直接交流・連携しアジアの成長のダイナミズムをとりこんでいく」
道州を軸としたグローバルな都市地域圏として経済政策を展開していく。各地が「善政競争」(ビジョンコ懇中間報告)でおこない、「国際競争力を都道府県から広域ブロック単位に拡大して構成する」するというもの。そのため、「陸海空にわたる交通・情報通信ネットワークの形成」がいわれている。今、国会で大問題となっている「道路中期計画」もメインは「国際競争力」の構築である。
②「持続可能な地域の形成」
人口減少化において、「医療等の機能維持など広域的対応」といい、「人口減少下での都市的サービスの向上を市町村から広域の生活圏で高める」こととしている。
③横断的視点として「新たな公を基軸とする地域づくり」
「県境地域に多く存在する過疎・山間地域の対策など、都道府県の区域を超えた広域的な対応が必要な課題が増大している」として過疎地域のNPOなどの有償運送や市民による河川敷清掃など「新たな公」を基軸にいちづける。これは道州制にともない、市を30万人とか、20万人とかに集約することで切り捨てられる部分への「手当て」という側面があるのだろう。
今回の道州制ビジョン懇「中間報告」と一致する流れであり、日本経団連が2003年に発表した「奥田ビジョン」の「メード・イン・ジャパン」から「メード・バイ・ジャパン」へという多国籍企業型国家へふさわしい「国の形」ということだろう。
さて「中間報告」の「6.道州制における税財政制度」を見ると
「(1)税財政制度の基本原則」
「基礎自治体や道州にも偏在性が小さく、安定性を備えた新たな税体系を構築することを旨とする。」「道州及び基礎自治体には、それぞれに付与された権限分野において、税目ならびに税率等を独自に決定し、みずから財源を確保できるよう、課税自主権を付与する。」と、消費税増税と地域受益者負担主義が柱
「(4)財政調整制度」
「すべての道州及び基礎自治体が財政的に完全に自立することは困難である。そのため、みずからが課す税だけでは財源が不足する道州及び基礎自治体については、その役割に応じて必要となる財源を確保することを大前提とした上で、財政調整が必要となる。」 とは財政調整も限定的で、財源保障の文言がない。
これらは、自民党の新憲法草案と、
第91条の2(地方自治の本旨)
② 住民は、その属する地方自治体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を公正に分任する義務を負う。
第94条の2(地方自治体の財務及び国の財政措置)
① 地方自治体の経費は、その分担する役割及び責任に応じ、条例の定めるところにより課する地方税のほか、当該地方自治体が自主的に使途を定めることができる財産をもってその財源に充てることを基本とする。
と同じである。
これらは、くらしの部分は、「自己責任、自助努力」でと、国のナショナルミニマムの責任を放棄するものでね憲法25条を空洞化させる中味である。
ところで「中間報告」肝心な部分をさけている。
「道州の役割」については「基礎自治体の範囲を越えた広域にわたる行政、道州の事務に関する規格基準の設定、区域内の基礎自治体の財政格差などの調整を担う。具体的には、①広域の公共事業、②科学技術・学術文化の振興、対外文化交流、高等教育、③経済・産業の振興政策、地域の土地生産力の拡大、④能力開発や職業安定・雇用対策、⑤広域の公害対策、環境の維持改善、⑥危機管理、警察治安、災害復旧、⑦電波管理、情報の受発信機能、⑧市町村間の財政格差の調整、公共施設規格・教育基準・福祉医療の基準の策定などを分担する。」としているので、現在、県がなっている福祉・医療、教育など担わないこととなる。そのためには、総合行政を担える基礎自治体の構築が不可欠であるが、今回の「中間報告」では、その規模や現在ある小規模自治体をどうするのか、という肝心の部分の言及をさけている。
平成の大合併の痛みはこれから本格的にあらわれるだろうが、県下でも、吸収された地域では役場がなくなり、まちがさびれ、「合併しなかったらよかった」「推進したのは間違いだった」との声が聞こえている。また、様々な合併にともなうまちづくりの様々な事業をすすめている途上である。その最中に、20~30万自治体に再集約すると発表したら、どうなるか。参院選の大敗をうけ「地方重視」ということを口に出さざるを得なくなっている時にである。
また、海外依存型の経済構造のもろさを露呈し、日経新聞でさえ「経済の軸足を家計の応援に」と言っている時に、地域を切り捨てていく市町村合併や道州制に、どれだけ説得力があるのか……特に高知のような田舎から見ると何の魅力もかんじない。
« 道州制 「中間報告」 雑感① | Main | 道州制「中間報告」 雑感③ »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 「高額療養費」の改悪 国民負担増で、国・企業の負担減(2025.01.08)
- 基礎控除引上げ、消費税減税…絶対額でなく負担比率の変化で見る (2024.12.09)
- 2024.11地方議員学習交流会・資料(2024.12.02)
- 所得などの「控除方針は金持ち優遇」と闘ってきた歴史(2024.11.15)
- 「立憲民主」の選挙政策を見る (2024.10.09)
「地方自治」カテゴリの記事
- 学校体育館への空調設置 スポットクーラー課題検証を受け(2024.12.28)
- 体育館の空調整備に新交付金 文科省/避難所の環境改善ガイドライン改定 内閣府(2024.12.19)
- 高額療養費、年金、高等教育、中山間地直接支払、周産期医療、学校給食 意見書案 2412(2024.12.08)
- 2024.11地方議員学習交流会・資料(2024.12.02)
- 24年9月 意見書決議・私案 「選択的夫婦別姓」「女性差別撤廃・選択議定書」(2024.09.05)
Comments