時限爆弾・・・後期高齢者医療制度
実態が知られるにつれて後期高齢者医療制度への怒りが広がっている。ただ、少し危惧しているのは、この法律の本質。「事件爆弾」という特徴を共通の理解にすることだ、と思っている。
高知で見れば、国保の独自減免を実施している高知市は、それがはずれれば一番所得の低い層の負担は二倍になる。他の市町村は独自減免を実施しておらず、多くは4割、6割減免制度であり、資産割が入っているので、3月の保険料の通知では安くなる人も多数でる。ところがこれが時限爆弾なのだ。
「あれ保険料が安くなったじゃないか」という人が、とくに公務員や民間のしっかりした企業ではたらいていた人には多いと推定している。時限爆弾ため所以は、1つは、 少子化がすすめば、保険料があがるシステムであること。2025年には3割増になる。2つめは被扶養者の保険料。政府は臨時措置として半年はゼロ、次の半年は1割負担とした。(本則で次の1年は均等割の5割)となっているが、二年後にはまともにかかる。保険料は本人の収入であるが、軽減措置は個人の収入でなく、世帯収入となっているため、均等割の満額4.8万円となる人がおおいのではないか(世帯分離での対応は可能)。また、診療報酬でも、包括医療など差別医療がいわれている。
九条の会の呼びかけ人の一人加藤周一氏は、「時限爆弾というものはすぐには爆発しない。」「1920年代に通った治安維持法、これをすぐには使わなかった。それから10年、20年経つと、それを使って言論と集会の自由を弾圧した」、また、「2・26事件が起こって、国民が知らない間に、軍部大臣現役武官制が復活した。しばらくは市民生活には何の影響もなかった。しかし、時が経つと軍部の気に入らない内閣には、法律を使い、大臣を出さず流産させた。それが侵略戦争への道に続いた」という趣旨のことを書いている。
ビラの弾圧など民主主義への攻撃、また、憲法二五条への攻撃も・・・時限爆弾として用意されている。
さて、後期高齢者医療制度・・・あらためて一昨年6月14日に成立した法をきちんと見る必要があると思う。
正式名称「高齢者の医療の確保に関する法律」
・第1条の目的に 「医療費の適正化を推進するため… 高齢者の医療について、国民の共同連帯の理念」
・第二条の基本的理念は「国民は、自助と連帯の精神に基づき、自ら加齢に伴つて生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、高齢者の医療に要する費用を公平に負担するものとする。」
・第三条 国は、「医療に要する費用の適正化を図るための取組が円滑に実施……運営が健全に行われるよう必要な各般の措置を講ずる」
…… 憲法二五条を一切無視、国による人権保障という観点は一切ない。「医療費適正化」を主目的にした初の法律。
そして、「適正化」のために
・第八条 「厚生労働大臣は……医療費適正化に関する施策についての基本的な方針を定めるとともに、五年ごとに、五年を一期として、医療費適正化を推進するための計画を定めるものとする。
……たとえば、特定健診の実施率が低いところには、後期高齢者への国保などから支援金が一割内で積み増しされる。
・第十条 「厚生労働大臣は、「都道府県医療費適正化計画の作成上重要な技術的事項について必要な助言をすることができる。」……… 療養病床の廃止は、この「必要な助言」としてなされている。
その削減を強制するのが14条!
・診療報酬の特例 「医療費適正化を推進するために必要があると認めるときは… 他の都道府県の区域内における診療報酬と異なる定めをすることができる。」…… 医療費の多い県は、診療報酬を引き下げるぞ、というシステムだ。
与党の幹部がどう言おうが法律は正直だ。
しかし、ここまで言うなら「身土不二」の精神で、輸入を制限し、日本の一次産業を守ることに、必死になったら、といいたくなる。オタワ宣言の精神で行けば、収入の不安定な非正規雇用も健康破壊につながり規制すべきとなるが……
本当に酷い法律だ。
« 岩国市長選 忠君愛国の亡霊 | Main | 倖田來未発言から見えること »
「社会保障」カテゴリの記事
- 保有を容認された自動車の利用制限を撤回する厚労省通知 「生活保護」改善(2025.02.26)
- 高額療養費制度改悪 がん患者・障碍者団体が声明。知事からも「国家的殺人未遂」と批判の声(2025.02.18)
- 「高額療養費」の改悪 国民負担増で、国・企業の負担減(2025.01.08)
- 「新しい生活困難層」 正規雇用に「内付け」された日本型生活保障の崩壊と改革展望(2024.04.25)
- 少子化~女性に「コスト」と「リスク」を押し付ける日本社会の帰結(2024.04.14)
Comments