高知市の行財政改革⑧ 同和、随意契約
高知市の財政再建にとって欠かせないのは、三位一体改革前に準備された「新市まちづくり計画」などの箱もの事業と特別法終了後5年経っても続けている同和事業の見直しであることは、繰り返し指摘してきた。高知市の同和事業の実態については高知民報の特集が詳しい。 そんな中で、随意契約について考えてみたい。同和事業を財政面から見てみると主なものは、市民会館2億数千万円、児童館8千万円、同和・人権啓発関係の本庁職員1億円、保育士の加配数千万円、仕事保障3億円などであるが、見直しの区別をすれば、他地域と比べ著しく公平さを欠きく市民会館や児童館や同和事業の終結すれば不要になる課の職員配置など財政面から大幅に削減できる分野、自治体の重要な役割であるが、透明性・公平性に欠ける仕事保障などの分野、市は同和事業に入れているが実態は一般行政として「家庭支援推進保育加配」の趣旨にのっとって運用されている保育士の加算などの分野と到達点が異なる。
さて、障害者、母子家庭の母親、高齢者の雇用の場をつくるために「政策目的随意契約」は必要である。
地方自治法施行令(167条の2)で認められている。障害者の厚生施設、授産施設、小規模作業所からの物品購入が04年10月の法定改定で認められた際に、厚労省障害福祉課長名の、各都道府県障害保健福祉主管部長あての通知(11月11日付け)で「今回の改正では、授産施設等において製作された物品を買い入れる契約に限定されるものであるが、実際に授産施設で行なわれている事業の実態を鑑みれば、現行の法令の範囲内で、各自治体の判断により、授産施設等における役務の提供も随意契約の対象とされることが望ましい」として、「印刷」「会議のテープおこし」「公共施設の清掃・除草」「クリーニング」等があげている。
母子、高齢者への仕事保障(役務提供)では、地方自治法では、随意契約は、明文的には、母子福祉団体、高齢者はシルバー人材センターに限られているが、高齢者雇用安定法では、40条では、シルバー人材センターに留まらず自主的な高齢者の事業団にも団体の育成、就業機会の提供を求めている。母子及び寡婦福祉法では、29条で、就業の機会の確保のため公共施設における雇入れの促進等を求めている。また、母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法においても6条、7条で物品及び役務の調達での増大の配慮をもとめている。
ただ、こうした随意契約も当然、行政が恣意的に相手をきめられるものではない。総務省自治行政局長からの各都道府県知事あての通知(04年11月10日付)では「地方公共団体の契約方法の原則である機会均等、透明性及び公正性を確保するための手続を規定する必要があり、具体的にはおおむね次のような内容が想定されるものであること。① あらかじめ契約の発注見通しを公表すること。② 契約を締結する前において、契約内容、契約の相手方の決定方法や選定基準、申請方法等を公表すること。③ 契約を締結した後において、契約の相手方となった者の名称、契約の相手方とした理由等の契約の締結状況について公表すること。」としている。
このことからすれば、①特別法終了後も「同和」を理由に随意契約していること ②特定の団体へ長期にわたり続けており、「機会均等、透明性及び公正性を確保」がされていないこと――違法性が極めて高いと言える。
仕事保障については、きちんと透明性のあるルールを築くことである。その場合、問題になるのは契約額である。高知市の場合、業務委託の入札に最低制限価格がないことからアウトソーシングにおいて「官製ワーキングプア」を生み出す危険が極めて強く、これまでも議会で問題にしてきたが、12月議会で「本市の事業でワーキングプアを生み出すことがあってはならない」と市長、総務部長が答弁し、労働条件の確保について対策を検討するとしたことは、「政策目的随意契約」の質を確保するうえでも重要なのである。
ちなみに、同和を理由として仕事保障について「そうしないと生活保護が増えてかえって市の財政を圧迫する」という趣旨の市側の説明が地元紙の問題提起の記事(これはよく書いたと評価している)に載っていたが、この説明に根拠がないことは「⑦扶助費の増加」で書いた通りである。
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