高知市の行財政改革⑦ 扶助費の増加
市の財政危機の原因に生活保護など扶助費の急増が「常識」のように語られてることが、かねてから「虚構」と苦々しく思っていた。
例えば、19年9月議会で市長は「起債の償還が伸びてきているということと,高齢化の進展によりまして,高齢者福祉の扶助費が増加をしておりまして,これに三位一体の交付税の大幅なカットということもございまして,今の厳しい財政状況を迎えているところでもございます」。3月議会では、助役が「扶助費につきましても増加傾向が続くと予測されます状況から,歳出面では今後も当分の間厳しい財政状況になると考えております」と述べている。このように財政危機は、①集中投資が必要だった社会基盤の整備に伴う起債償還の増加 ②扶助費の増加 ③交付税の減、が3大要因と説明されてきた。
病気を治すには、原因を正しく認識しないと、治療も効果が発揮しないのは当然だ。時には悪化さえする。では、扶助費の増加は財政危機の原因なのだろうか。
扶助費の大半を占めるものは生活保護だ。12月議会では、そのことを追及した。4分3が国庫負担金。4分の1は自治体財政から支出しているが、交付税措置されているので本来は、自治体の持ち出しはないことになるが、この金額が実態より少ない。生活保護の給付は、04年166億円、05年167億円、06年167億円ですが、市の持ち出しは、生活保護の急増にも関わらず、それ以前の4~5億円と変わっていないことを執行部は明らかにしました。そのため、執行部は「三位一体改革により、交付税が削減されるなか相対的に負担が増大」と苦しい答弁となりました。平成17年の普通交付税は256億円、「三位一体改革」で年交付税が38億円下がったというので現在220億円としても(合併があるので通しの計算がややこしいので概算)、1.95%から2.27%と0.32%比率が増えたことで、国のやり方は許せないが、市の「財政危機」の「理由」としては納得しがたい。
北九州市のように予算枠を決めて削減に血道をあげてきたところもあるが、高知市はそうではない。ライフラインなど公共料金の滞納について、福祉部門とも連携して対応することを以前から求めていましたが「水道局、住宅課、保険医療課の各課と連絡会を実施している」と改善をはかっていることを12月市議会で答弁した。
また、多重債務解決にかかわる市の相談活動は、全国の被害者団体からも高く評価されていることを紹介し、公共料金の滞納の背景に多重債務問題があり、市内部の連携と体制充実をもとめました。
執行部は、「消費生活相談2708件のうち、約半数が金融・保険サービス、その大半が多重債務。県の自己破産率は三年連続で全国一。大変深刻な問題。本市の事業は、専門機関からも高い評価をいただいている。今後さらに弁護士・司法書士等の専門家との連携、先進都市の取り組みも視野に入れ、庁内関係部署とのネットワーク化、消費生活相談員の増員などを含め相談体制の充実にむけ検討したい」と前向きの答弁。当然、市の福祉事務所との連携も含め、多重債務解決後の生活の再出発の支援もすすめてほしいと願っている。
一方、ケースワーク業務の一部をOBなどにアウトソーシングする動きがあるが、今朝の読売新聞が「生活保護業務ケースワーカー、無資格者が23%」と報道している。また、経験3年未満が全体の7割近いとのこと。「保護世帯の増加に対して自治体側の職員育成が追いついていない現状が浮き彫りになった」と報道している。専門性の高い職種であり、複雑になる社会構造の中でますます重要な役割が果たす仕事である。単なる財政論でアウトソーシングの議論をするのでなく、憲法25条を支える職場であり、きちんとした職員配置、専門性の高い職員の育成を願いたい。
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