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後期高齢者医療 「医療費増の痛みを自覚させる」と厚労省役人

  「医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自ら自分の感覚で感じ取っていただくことにした」・・・後期高齢者医療制度の目的を、制度設計した厚生労働省の役人が、あけすけに語っている。大阪社保協のホームページ「大阪社保協FAX通信  第744号 2008.1.22 」にアップされているので紹介したい。
  講演した土佐和男氏は、昨年NHKの保険料が高すぎて医療から排除されるという国保問題の特集番組で、厚労省の国保課長補佐として「国保は相互扶助の制度です。」「保険料を払わない人は本来医療を受けることができない」「保険料は参加費である」と国保法にも規定していない憲法25条を蹂躙する発言した人物である。
 高知県でも大きな怒りが吹き上がってる同制度・・・ぜひ、講演の概要と問題点の解説がついているので、たたかいの力にしていただきたい。

後期高齢者医療フォーラム」開催~土佐和男氏 (厚労省国民健康保険課課長補佐)の講演の概要と問題点について 
 08年1月18日、石川県後期高齢者医療広域連合主催の「後期高齢者医療フォーラム」が開催され、県内市町村職員及び老人会からの参加者約1,000名が集った。厚労省国民健康保険課課長補佐の土佐和男氏が「後期高齢者医療制度高齢者医療制度の創設とねらい」というテーマで基調講演を行った。後期高齢者医療制度の制度設計をした一人の土佐氏の講演を紹介しながら、その問題点を検討したい。
(石川県社会保障推進協議会 寺越博之)

土佐和男氏紹介:昭和28年生まれ、中央大学法学部卒業、杉並区役所入庁、国民健康保険課長、高齢者施策課長を経て、厚労省にスカウト入省。現在、厚労省国民健康保険課課長補佐、老人医療企画室室長補佐、高齢者医療制度施行準備室室長補佐。

【土佐和男氏講演概要】◆何故、自分が講演にきたのか。                               
自分は経歴の通り杉並区で国保の仕事をしていた。厚労省は国保の保険料滞納問題に頭を悩ませていたので、現場経験のある自分をスカウトした。後期高齢者医療制度をたちあげる時にも、現場経験が必要と言うことで、施行準備会室にも所属となった。準備室は当初20名はいたが、現在、3名となった。室長と法律担当者と自分、室長と法律担当者は国会対応の関係で地方には行けないので、自分が講演で全国に出かけている。

◆何故、後期高齢者医療制度をつくったのか
・国の医療費がどんどん増える。将来60兆円にもなる。
・75歳以上の高齢者は一人当たり、75万円、64歳~74歳は一人当たり35万円、65歳未満は、15万円かかっている。
・今後高齢者が増え、後期高齢者が3倍、3000万人、前期高齢者が3000万人、併せて6000万人になる。
・70万円の医療費の人が3倍になる。3倍になった医療費を誰が払うのか。3つの方法を検討した。(1)75以上(2)65歳以上(3)述べられず。
・現在、若い人が5割支援をしている。6000万人を65歳未満で支援していけるのか。65歳~74歳は、働いている人も多く、年金も平均220万円になる予定。「どこまで支えきれるのか」ということから、75歳以上にした。

◆現役並の所得者について
・現役並の所得者には公費負担はしない。若い人々が負担することにした。

◆どこがこれまでと違うのか
・全ての人が保険料を払うことにしたことである。医療費の10%を後期高齢者が負担する仕組みにしたことである。

◆何故、10%なのか
・後期高齢者の多くは国保。国保では後期高齢者は医療費の約10%に相当する保険料をはらっている。保険料は、国保とできるだけ変わらないようにしたいという考え方の結果である。

◆何故、独立型保険にしたのか。
・60兆円の医療費を抑制しながら、若い人が支援していける仕組みにした。
・医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自ら自分の感覚で感じ取っていただくことにした。今まではそうではなかった。例えば月25回通院している人が多くいれば石川県の医療費があがる。それを月20回に減らせば、医療費が下がり保険料は下がる。
・医療費が高い県は、北海道、福岡、大阪である。低い県は長野県である。長野県が何故医療費が低いかというと二つの理由がある。表向きの理由は、長野県には、指導員がたくさんいて、食生活などの生活指導を盛んに行っている。その指導の効果があって医療費が低くなっている。もう一つの理由は、病院が少なく、病院へのアクセスが大変なので、病院には気軽に行けない。だから医療費が低くなっている。北海道は、何故医療費が高くなっているか。北海道では広いので病院へのアクセスが悪いのですぐに入院となる。北海道は明治以降に発展した地域。だから、歴史と人のつながりも弱い。家族が病院で看取りたいという人が多い。
・福岡は炭坑のせいと言われているが、医療費が高い地域は旧炭坑のある町ではない。精神科の病院が多いためである。大阪は何故高いか。大阪ではかゆいところに手が届く濃厚診療が行われているからである。
・医療費が高いところは保険料が高くなる。医療費抑制のために努力されている県は負担が少なくなる。

◆何故、保険者を広域連合にしたのか。
・市町村は国保を運営している。保険料を抑えるために一般会計から繰り入れている。後期高齢者医療制度の保険者を市町村にすると、市町村は国保と同じ、一般会計から繰り入れてしまう。どうしてもそういう形になってしまう。従って、市町村が無理と言うことになって広域連合になった。

◆後期連合になると変わることがあるのか
・財政・運営事務は広域連合、手続き、受付、相談業務は市町村に残した。これまでの老健法の手続き、負担と同じような仕組みにした。給付も変わらない。新たに高額医療・高額介護合算制度もつくって前進したところもある。しかし1点だけ、不利なことがある。それは、現役並の所得者の基準を変えたことである。年収を630万円から520万円に基準を下げた。それは、現在、国保では現役なみの所得者の基準は390万円以上である。390万円の人が630万円の人を支えるということには無理がある。だから下げた。将来的には400万円ぐらいに引き下げたい。

◆保険料額について
・全体として保険料は上がることはない。しかし医療費が高い地域は保険料が高い。国保では資産割があるが、後期高齢者医療制度では資産割を外さざるを得なかった。資産割がなくなったので国保より安くなる場合も多い。
・7・5・2割軽減制度が導入された。国保で6・4割軽減している自治体があるが、そうした自治体では軽減割合が上がる。有利になる。
・しかし、現行の国保より高くなる地域がある。それは国保に一般会計から繰り入れている地域である。一般会計から繰り入れるというのは、税金から繰り入れる。働いている人は、国保ではない。そうした人たちの税金が一部の国保のために繰り入れられるのはおかしい。
・上限額は50万にした。国保では56万だから、現行56万の人は安くなる。被用者保険本人の人が該当することになるが、そうした人は会社の役員が多いのだから負担できるはずである。
・保険料は応能割と応益割の合計額となる。応益割合に相当する医療費は5%である。応能割に相当するのは、平均的な医療費のところで5%。今回、医療費の多寡でもって調整はしなく、所得でもって調整することにした。従って裕福な東京や神奈川、愛知から貧しい県にお金がまわるように調整をした。

◆若い人たちの保険料
・若い人たちの保険料は3本立てとなる。(1)74歳未満の保険料(2)後期高齢者を支える保険料(3)介護保険料である。
・医療費が上がれば上がるほど保険料が上がる。助け合いや予防活動などで保険料が下がる。従って、誰のために保険料が上がったのか、誰が努力して保険料が下がったのかがはっきりみえる形になった。

◆保険料の年金天引きについて
・国保では滞納が多くなっている。10%以上滞納している。
・国保では、未納者の分を保険料納めている人たちが負担をしている。
・後期高齢者医療制度では未納者の分まで分担しなくてもよいよう年金天引きにした。
・また、保険料を納めに行くのは大変面倒で、とりわけ寒い冬の場合はなおさらそうである。そうした面倒をかけないで済むように年金天引きをした。

◆資格証明書について
・現状の国保で高齢者に資格証明書を出していないのは、出していないのではなく、できなかった。保険料徴収と給付は別々になっていたからである。後期高齢者医療制度では一つの制度に一本化したのでできるようになった。
・後期高齢者の人たちはきちんと保険料を納めている人が多いので、保険料を滞納する人は大変少ない。それでも保険料滞納として残るのは悪質な人である。

◆後期高齢者医療制度の医療内容について                          
後期高齢者の医療のあり方については、現在審議中であり、なかなか変えれない。ただし終末期医療は新しい仕組みとなる。

◆最後に
・75歳以上の医療費があがると保険料が上がることを十分理解してほしい。風邪引いたら田舎ではすくぐ病院にはいかない。自分も都会にでてきて、風邪を引いたら医療機関に行くようになった。田舎にいたときは親が厳格な人だったので、風邪を引いたら、乾布摩擦をして治していた。
・後期高齢者医療制度は、給付は老人保健法とほぼ同じで、保険料については、国保と同じで、財政調整の仕組みは介護保険とおなじである。つまり新しい仕組みだが、従来と同じようになっている制度である。

【土佐和男氏の講演の問題点】
 昨年NHKが国保の特集番組を報道した。国保の実態の告発と大量に資格証明書を発行してきた福岡市が資格証明書の発行を止めるようになった背景とその取り組みが報道された。その番組で、厚労省の国保課長補佐として土佐氏がインタビューに答えて、「国保は相互扶助の制度です。」「保険料を払わない人は本来医療を受けることができない」「保険料は参加費である」と国保法にも規定していないこと、憲法違反のコメントを述べていた。
今回の講演でも、数字を過大にして脅かしたり、法律上の規定を無視して、土佐氏流の解釈をして、ごまかすなど問題発言が多かった。ここで何が何故、問題なのかをコメントする。

1.「現在、若い人が5割支援をしている。6000万人を65歳未満で支援していけるのか。」の発言
  現在、老人医療費の負担を若い人が5割負担してはいない。40歳以上が負担しているのは、老人医療費の4割でその他は公費である。健康保険や共済組合では事業主の半分負担があるので、40歳~65歳未満を若い人とすればこの人たちの実質負担割合は2割前後であると推計される。  
 土佐氏は若い人の負担を過大に誇張して、世代間対立をあおることを通して、高齢者に脅しをかけているのである。

2.「60兆円の医療費を抑制しながら、若い人が支援していける仕組みにした。」「医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自ら自分の感覚で感じ取っていただくことにした。」の発言 
土佐氏の「医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自ら自分の感覚で感じ取っていただくことにした。」ということは後期高齢者医療制度のねらいを端的に表す言葉である。医療費が増えるのは、後期高齢者の自己責任ですよ。痛みを減らしたかったら、つまり保険料が上がるのが嫌だったら、医療費を下げなさい。医療費を下げなかったら、痛みはさらに強くなる。要は痛みの軽重は皆さんの努力しだいですよ」と言っているのである。
  後期高齢者医療制度は、「保険料引きあげますか、それとも保険給付を下げますか」の二者択一を迫る制度である。後期高齢者の痛みの限界を超えて医療給付を増やすことができない仕組みである。この悪魔の選択で後期高齢者を死ぬまで脅し続ける制度である。
医療費が60兆円になって何が問題なのか。健康で長生きできることは人類の悲願である。その悲願を実現するために要する医療費が増えても良いのではないか。医療費は、高齢者が増え、医療技術が向上し、医療従事者の人員、体制が充実すれば増えていくものである。増えていくことが自然である。問題なのは、厚労省の考え方である。つまり後期高齢者の保険料負担の範囲内に医療給付額を押さえる、つまり総量規制の考えた方がおかしいのである。保険料は負担応力に応じて、医療費は必要に応じて提供されるのが適切なのである。

3.「市町村が国保に一般会計から繰り入れるのはおかしい」という発言
土佐氏は、後期高齢者医療制度の保険者を市町村にしなかったのは、市町村だったら「保険料を抑えるために一般会計から繰り入れてしまう」と述べ、後期高齢者医療制度の保険料が現行の国保より高くなる地域として「国保に一般会計から繰り入れている地域」と述べ、国保に一般会計から繰り入れることを問題としている。その理由は、「国保でない勤労者が納めている税を一部の国保の人にまわすのはおかしい」ということらしい。この理屈が通ったら、子どものいない世帯の税金がこどもの医療や福祉にまわったらおかしいということになる。

4.「現役並みの職基準の変更理由について」の発言
  土佐氏は、「現役並の所得者の基準を変えた。」としてその理由は「国保の現役なみの所得者の基準との整合性」としている。この基準の変更は国会の厚生委員会では、「現役なみの所得が減ったから」と説明されている。土佐氏の説明は、詳細がわからない国民をごまかして、合意させようとしているものである。土佐氏が述べた年金額も夫婦世帯の収入基準なのに、二人の収入とは説明していない。数字を偽ったり、誇張することで、改悪や後退を小さく見せようとすることは、年金改悪の時の出生率の報告のごまかしなど厚労省の常套手段だが、卑怯な手である。いずれにしても将来、現役並の所得を400万円にしたい(一人200万円)と本音を述べたが、小生などが、「後期高齢者医療制度は団塊の世代が後期高齢者になった時のことを考えている。現役並みの基準は今後ずーと下がっていくので、団塊の世代で厚生年金受給者の多くは、死ぬまで現役なみの所得者として扱われ、今も、将来も3割負担となる」と繰り返し指摘してきたが、それを厚労省担当者が裏付けたものである。

5.「世代間対立をあおる」問題発言について
  土佐氏は、「医療費が上がればあがるほど保険料が上がる。助け合いや予防活動などで保険料がさがる。従って、誰のために保険料があがったのか、誰が努力して保険料が下がったのかがはっきりみえる形になった。」と述べ、世代間対立をあおる仕組みを明らかにした。医療費があがっても公費や企業の負担を増やして保険料をあげないことは十分可能である。国や企業の負担を減らすために、世代間対立をあおって、国民を分断して行く道の行く手には、確実に地域医療の崩壊が待っている。

6.「保険料の年金天引き理由」の問題発言
  土佐氏は保険料を年金天引きした理由に、「とりっぱくれがないこと」「被保険者の利便性」をあげている。当事者のためといいながら、全部、厚労省が望んでいることではないか。年金から本人の合意なき天引きするのは違法である。

7.「資格証明書の発行」についての問題発言
  土佐氏は、現行国保では「高齢者に資格証明書を出したくても出せなかった。保険料徴収と給付は別々になっていたからである。」と述べている。老人保健法対象者が資格証明書交付の対象からはずれていたのは、高齢者が病気をもっている人が多く、医療機関への受診が欠かせないからである。土佐氏のこの発言は重大である。資格証明書のもつ問題について彼は把握していない。人のいのちの尊厳と平等、人権感覚のなさには驚くばかりである。

8.「滞納者として残る人は悪質な人である」という問題発言
  現行国保では、保険料を1年以上滞納している人で、保険料を十分払える資産や能力があるのに滞納している悪質滞納者が資格証明書発行の対象になっている。後期高齢者医療制度では月15,000円以内の無年金・低年金の後期高齢者が資格証明書発行の対象者となる。
  アメリカを除いて先進諸国では、最低保障年金、最低生活保障制度が実施されている。従って、月15000円未満の収入の人がいないのである。日本は、国連社会規約委員会の「最低保障年金制度を創設するよう」という勧告を無視し、多くの高齢者から、人間に値する生活をする権利、さらには、医療を受ける権利さえ奪おうとしている。
  後期高齢者医療制度は、保険原理主義を強め、社会保険を私保険に限りなく近づけ、保険料納付を国民に義務化させるものである。従って、この義務を果たせなかった人は、善良なる市民として支援や保護を受ける資格が奪われ、悪質な市民と位置づけられるのである。
  このような考え方は憲法の指し示す考え方ではない。保険料の対価として医療の給付があるのではない。医療を受ける権利が憲法に規定されていて、その権利を保障するものとして医療を受けることができるのである。たとえ、極悪非道の犯罪者であろうと、支払い能力があるのに保険料を滞納している人も等しく医療を受ける権利があり、医療が受けられなければならない。土佐氏はそこことの重さ・意味について何もわかっていない。

9.「風邪を引いたら何故病院にいったら悪いのか」
  土佐氏は、都会だから、風邪を引いたら病院にいくようになると気軽に医療機関に受診をすることを悪のように後期高齢者が300名以上いる講演会で話をした。奥能登からもバスできていた高齢者に「もっと我慢しなさい」と言ったのである。風邪は万病の元で、高齢者は自覚症状が乏しいので風邪だと思ったら、早めのパブロンではないが、早めの受診が大事なのである。土佐氏の高齢者の健康といのちを愚弄する発言には怒髪天をつく怒りでいっぱいである。

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