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全国学力テスト結果概要を聞いて

 全国一斉学力テストの結果概要がニュースで流れていた。読み書き計算は8割方の水準だったが、読解力や自ら問題を解決する力はそれより10数ポイント低いようなことがいわれていた。PISAの結果から皮相な「学力低下」論の席巻して、総合学習を減らし、読み書き計算など全体の授業量を増やそうとしていた文科省の思惑と違うことになった。根本的な検討、国民的議論が必要と思う。今回のテストはPISA型を意識して、ほとんどの問題が記述式とのレポートを読んだが(そういうデリケートなものを解答例を参考に派遣労働者に採点させてているという問題もある)が、そもそも問題の形式だけ変えても解決しないという教育学者の指摘は多い。

OECDが実施しているPISAの学力調査の狙いは、単なる知識や技能の習得ではなく、人生での成功と社会発展に貢献するために、広い意味で役に立つ能力を獲得するために、どうすればよいか、という問題意識でなされている。そのための中心的な概念は、①社会的に異質な集団で交流する力、②自律的に活動する力、③道具を相互作用的に用いる力という三つのカテゴリーから成っている(D・ライチェン&L・サルガニク編著/立田慶裕監訳『キー・コンピテンシー~国際標準の学力をめざして~』2006年、明石書店を参照)としている。この内容とむすびついてこそ、知識や情報を読み解き、自ら問題を解決する力としてのリテラシーも生きるわけで、こことキリはなされば、単に「テスト」の上での操作技術の1つになってしまうおそれがある。
 交流も自立も、自己と他者を大切な存在と肯定することからしかはじまらない。分かる喜び、仲間とやりとげた達成感、異なる意見の大切さ・・・あげればキリがないと思うが、国は、学力調査なら抽出調査で十分なわけて、膨大な個人情報を民間に蓄積するようなことに莫大にお金をかけるより、30人学級の実施や報告づくりでおわれている教師の多忙化を解消するために成果主義をやめるとか、人と人の営みとしての教育が出来る環境づくりに力を注ぐべきと思う。
 

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