高知市の行財政「改革」 ②偽装請負
180億円からの新市まちづくり計画や年間10億円の同和事業はそのままに、アウトソーシングを経費削減の切り札にしようとしているが、問題は多岐にわたる。 偽装請負について後半で説明しますが・・・6点
①格差と貧困が問題になっているきに、市役所が、労働の劣化など「格差」を推進立場にたつという問題。厚労大臣も「民間であれ公的な団体であれ、不安定雇用を促進することは労働行政の上ではまったく望ましくないことだ」との答弁している。
②質の確保 低賃金で職員の入れ替わりが激しい。学校給食での0157対策やアレルギー食対応などの「マニュアルになっているから大丈夫」と言えるか。
③民間に委託しても委託料が発生する。また、質を確保するためには公の管理体制を強化する必要があるふじみの市のプール死亡事故。委託業者が下請けに丸投げ、最後は大半が高校生のアルバイトというなかで起こった。しかし、責任を問われたのは行政。
④安さや質を確保しようとすると県外業者に仕事が流れる。地域経済にとってマイナスとなる。
⑤委託先がなくなった場合に、それを支えてきた従来の公的組織はすでになくなっており、受け皿なくなる問題もある。
特に、文化行政など長期的視野で取り組む必要のものがあるは指定管理者(3~5年契約)では不安定。また、 指定管理者制度の取り消し(総務省発表)…全体の1割の民間企業が取り消しの半分占めている。
しかも、公で受け皿がなくなった場合、長期的に委託料がつり上がっていく。PHP研究所の論文でも、「民間委託は、必ずしも安くならない」と警鐘をならしている。
特に「偽装請負」の問題がある。市議会ではた議員が提起した。今日の貧困をつくりだした原因として社会問題化している問題である。業務委託も請負にあたる(厚生労働省 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示)。
請負とはどんな要件が必要か。労務・人事管理で完全な独立性があること。業務上では、「単に肉体的な労働力を提供するものでな」く、①機械、設備、機材、材料等の自己暢達により業務が行われている。注文者側の無償使用ではなく、少なくとも賃貸借契約等により費用を負担していること。 ②専門的な企画、技術、経験により自己の独立した業務の遂行が為されている。ことが必要である。直接的な指揮命令関係や施設の無料提供も偽装請負である。日本の法律は単なる労務提供を禁止している。ピンハネなど労働者の権利を侵害する間接雇用にあっては、制限をもうけ、派遣では、政府も「臨時的、一時的なものであり、常用雇用の代替にしてはならない」と国会で答弁し、一定期間たでは直接雇用の責任が発生することとなっている。請負は業者の労働環境を守る観点から、現場で独立性を保つことが原則となっている。これらは契約文書でなく実態で判断される。
最近でも滋賀県の湖南市が、調理業務だけを任し、献立や食材は栄養士が指示する方式を採用したが、全国の事例を調べた結果、県や市職員の栄養士が日々指示するのは独立性を脅かし、「偽装請負」に当たることが判明。滋賀労働局からも指摘され、導入を見送っている。
とくに最近は、派遣先の労働者による請負労働者への指揮命令の問題とともに、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分基準(昭和61年4月17日労働省告示第37号)」(以下、基準)を厳格に適用する傾向になっており、埼玉労働局が、埼玉県北本市への是正指導において「備品を市が無償貸与している」点を指摘、兵庫労働局が、兵庫県丹波町の調理業務の民間委託計画に対して「市が購入した食材を受託業者に提供する」方法は、基準に照らして疑義があると指摘している。
チームで行う公的サービス・・・給食、保育、受付業務などは質の面でも法的にも請負はなじまない。公が脱法と貧困の先導役となり「安かろう悪かろう」「安物買いの銭(命や健康)失い」になりかねない。これらを真剣に検討した形跡はない。まったく底の浅い提起である。
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興味深く読ませていただきました。秦市議の質問の元になっているのかな。国家公務員の職場でも同様のことが起きています。労働運動での中心課題になりつつありますね。
Posted by: さかやん | September 22, 2007 11:04 PM