コンブライアンス、リスク管理の危うさ
近頃、行政の現場でよく聴く言葉。コンブライアンス(法令順守)とリスク管理。不正・不公正な行政の執行をなくそう。1つ1つの施策の法的根拠を明確にし、訴訟やクレームに対して毅然と対処できる、特定市民などの介入を許さない・・・ しかし、もともと企業経営の中で生まれだ概念を自治体に導入するとき、ここには自治体のあり方について重大な問題が潜んでいる。もともと地方自治とは、憲法の人権保障の諸内容を、より生活に近い場で、それぞれの地域に合った形で、住民参加のもとで実現することにある。かつての公害闘争のように、規制する国段階の法律がなくても、憲法の13条、25条などを根拠に、企業活動を規制する条例などの制定、裁判闘争などを通じ、国段階の法律、規範を確立していったことを考えると問題点がよくわかる。コンブライアンス、リスク管理は、使い方によって、国の法律、具体的には通達の範囲で行政運営していれば、「まちがいない」という非常に消極的な行政、地方自治の精神を失った行政を生み出すことになる。行政の現場で、そのような萎縮が進んでいるように感じる。たとえば、国保料の滞納による保険証のとりあげも、国の法令遵守なら当然の行為だが、憲法の諸規定からみれば生存権の侵害にあたる。まちづくりでも何重にもある行政手続きを踏んできた計画を時代の変化にあわせ変えることにはリスクが伴う。その時に、行政の様々な部署で、どちらの原則を重視するか、ということに首長の姿勢が極めて重要な要素となる。また、その首長の姿勢を支持する住民の力の反映でもある。福祉にしても、まちづくりにしても、国のやり方を「遵守」するのでなく、住民の暮らしの実態、生活の現場の声を、憲法の原則にのっとって前進させる取り組みが必要と、強く思うこの頃である。
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