2021年春闘提言
今こそ内部留保を活用して日本経済の再生を!-新型コロナ危機をチャンスに-
2021 年 1 月 18 日 労働運動総合研究所
http://www.yuiyuidori.net/soken/ape/2021/210118_01.pdf
以下は、サマリー部分
◇ 昨年12月20日に亡くなったアメリカ有数の知日派学者、エズラ・ボーゲルは、1979年に『ジャパン・アズ・ナンバーワン-』を著しベストセラーになったが、いま、各国の指導者は「日本のようになってはいけない」と日本を反面教師にしている。
その原因の第1は、この間、自民党主導で進められてきた「新自由主義的経済政策」が、本来行うべき政策とアベコベだったからであり、第2は、大企業の目先の利益を追求した「リストラ」、無理な価格競争、そして国民不在の海外展開である。
◇ 転換点は 2000 年であり、ひとまず 2000 年の姿に戻すことが経済再生のスタートになる。
賃金を 9.26%、3万 2,922 円引き上げ、雇用者に占める非正規の割合を 2000 年水準まで戻し、消費税を5%に引き下げ、法人税を同 30%に引き上げる等が必要である。
◇ 生産コストの上昇は価格に転嫁すべきであり、本提言で主張する労働条件の改善によって約4%の物価上昇が見込まれるが、それは“悪い物価上昇”ではない。
◇ 国の借金は、2020 年度に新型コロナ対策の補正予算が加わって 1,240 兆円まで膨らんだ。一方、企業には、702.6 兆円もの内部留保が存在し、そのうち約 400 兆円は不要不急の財源であると判断される。
今こそ、その資金を有効に活用して、「失われた 30 年」を回避するための抜本的な経済改革を進めるべきではないか。それによって、新型コロナウイルスによる危機を経済再生のチャンスに変えることができる。
◇ 経営者や財界の幹部は、「内部留保は経営の成果の蓄積」というが、2000 年以後の内部留保の急激な積み上がりは、企業減税と労働者への犠牲転嫁によるところが大きい。
本提言で提起している不払い労働根絶、年休完全消化、週休2日制完全実施、非正規雇用の正規化および 2021 年春闘要求 2 万 5,000 円賃金引き上げの実現は、単純に合計しても、必要な原資は 84.65 兆円であり、不要不急な内部留保の 21.16%を充てれば足りる。
◇ 労働・雇用条件の改善は企業の労務コストを上昇させるが、やがて家計消費需要の拡大を通じて新たな国内生産が誘発され、企業経営にプラスとなって跳ね返ってくる。また、付加価値や雇用および税収を増加させ、国全体の経済を活性化する。
◇ 世界の多くの学者・経済人が、新型コロナウイルスのパンデミックによる世界的な景気後退を契機に、これまでの経済運営からの大転換が必要であると言っているが、長期の低迷を続け、“失われた 30 年”になろうとしている日本にとって、それは一層重要なことである。
◇ 2021 年春闘は、単に成果の配分を求める賃金闘争にとどまらず、日本経済の大転換を目指す「世直し春闘」になるべきであり、その中で労働組合が果たすべき役割と責任はとりわけ大きい。カギは春闘再構築であり、労働者の統一した闘いの中でこそ、未組織労働者を迎え入れ、大きな流れを作ることができる。
【下段は、内部留保についての分析部分】
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